弦楽器工房こばやし

小田原の弦楽器工房こばやしのブログです。仕事をしていて感じたあれこれを週一くらいで徒然と書いていきます。

恐怖の虫食い

こんばんは、弦楽器工房こばやしです。

未だに咳が治らず…寒くなって来たのと相まってツラいです。体調管理はしっかりしましょうね。

さて、今回は虫のお話です。

直接的な写真を掲載はしませんが、細かな説明はいたします。もしお食事中でしたら、後ほどお読みいただいた方がいいかもしれません…。

 

先日、毛替えを去年の9月頃にされたお客様からのご相談で、「弓毛がきれてしまっている」というものがありました。

1年程度で切れてしまうということは、まずありません。あるとすれば、弓本体上下のクサビの作りが悪くて毛を切ってしまっているか、もしくは毛の質が悪かったか…どちらにしても良い状態ではありません。

はっきり言えば、クレームものです(・_・;

ですが、状況を詳しく聞いてみると、弓の真ん中あたりからパラパラと切れてしまうと仰います。

この時点でピンと来ました。虫です。(と、同時に技術や品質の問題ではないと、ホッとしてしまいました…)

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毛の写真は撮りにくいですね…下はエプロンの上で撮ったもので切れた部分のアップです。

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特定の位置からではなく、真ん中付近から前後ランダムにバラバラに切れているのが見えるでしょうか。(お客様には許可を得て掲載しております。)

果たして、お預かりしてみると楽器ケースの中に全長2〜3㎜の虫の姿が!

ヒメマルカツオブシムシというのがこの虫の名前です。(ご興味がありましたら検索してみてください。あまりオススメはしません。)

春先に卵が産み付けられると、そのまま冬を越すまで幼虫で過ごし、また春に卵を産んだ後出て行くという厄介な性質を持っています。

特に動物性の繊維や角質を好んで食べるということで、つまりタンスに入って服に穴を開ける張本人(張本虫?)というわけです。

幼虫は暗いところを好むため、締め切った楽器ケースなどはもってこいの生息環境なのですね。

このお客様の場合、少し体調を崩されて半年くらい楽器を触れませんでした。さらに猫ちゃんを飼っているということもあり、非常に被害にあいやすい環境だったと言えます。

こうなると直接取り除くしかありません。

ケースの中のものを全部出して、隅の方にいる幼虫を1匹ずつピンセットで取っていきます。

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これは私の持っている別のケースです。(虫の写真はありません)

1枚目のような角の部分、2枚目にあるような影の部分に潜んでいます。パッとみただけでは繊維の集まったゴミのようにも見え、虫だとは思えないかもしれません。

ですが、手に取ってみるとコソコソと歩いて逃げようとするのですぐにわかります。

一回では取りきれていない可能性もあるため、楽器と弓を避難させた上で数日おきにケースを開け、出てきた虫を捕まえます。

さらにハンディの掃除機をかけ、虫が好みそうな猫ちゃんの毛などを取り除きます。

タンスに入れるような防虫剤を使用するのはどうかと聞かれましたが、防虫剤は虫を殺すのではなく、あくまで防虫が目的なので発生してしまった虫には効果が薄いそうです。

今回の件では、3度目の掃除後に虫を見なくなったので終了としました。

お客様にはその後タンス用の防虫剤を入れていただくようにお願いをしました。最近は無臭のものもありますので入れていても気にはなりにくいと思います。

カツオブシムシは絶食に強いらしいので最低でも一年くらいは防虫剤を交換しながら様子を見ていただこうと思っています。

以上、虫のお話でした。実物の写真を見られた方ならお分かりと思いますが、なかなかにエグい姿をしています。苦手な方は日頃の防虫をこまめにすることをオススメします。

 

弦楽器工房こばやしは小田原の栢山から、弦楽器の出張修理を承っております。

詳しくはホームページをご覧ください。

https://musical-instrument-repair-shop-51.business.site