こんばんは、弦楽器工房こばやしです。
噂の映画「ボヘミアンラプソディ」を見てきました。素晴らしかったですね。
私がQueenを知ったのは、「ウェインズワールド」という映画の挿入歌として流れたボヘミアンラプソディを聴いたときで…音楽を聞いて衝撃を受けた、初めての経験でした。なんとまあ、あれから27年も経っています。
内容や感想は他のサイトにもたくさん書いてあるのでそちらに譲るとして、劇中で
「新しいことをやり続けるのがクイーンなんだ」
というようなセリフがありました(細かいところはうろ覚えです)。シビれますねぇ…ほんとカッコいい。
チャレンジはしていきたい。でも踏み出すのがコワい。というのが普通の人、でしょうからね。
さて、自分の仕事、弦楽器に置き換えて考えてみましょう……私の悪いクセです。
幸いなこと(?)に、バイオリン属の楽器の作りは楽器が生まれた当時と比べてほとんど変わっていません。
一度作りを覚えてしまえばおそらく一生使える知識となります。
では新しいこと…技術や技法なども変わらないかというと、それは違います。
例えば、ニス。有機溶剤を使用したラッカー系のニスは当時にはありませんでした。乾燥が早く、塗膜も強いラッカー塗料は普及品の楽器に多く使われています。(塗膜が強い分、表面の傷が直しにくいんですけどね。)
製作の技術も当時とは変わっていることも多いはずです。
大規模な木工機械は存在しませんでしたので丸太から使いやすい大きさに製材するのは大変でしたし、工業技術の進歩によって手工に使う刃物やヤスリなども使いやすく安価なものが簡単に手に入ります。
ときどき、楽器製作に機械を使うことを極端に毛嫌いする方がいらっしゃいます。
確かに手工を多用した製作の方が暖かみのある、個性豊かな「作品」ができるかも知れません。
ですが、その板を切り抜くのに使ったノコギリは昔と同じように手で作られたものでしょうか。ナイフに使われている金属は大量生産品では?
自分は芸術家ではありません。職人です。作っているのは作品ではなく製品です。
安く、早く、便利なものがあればそれを使うのが当然で、だからこそより良い物をコストをかけずに作れるようになると思うのです。
直近の新しいもの、というと、紫外線で固まる樹脂をニスの修理に使用することがあります。
ニスの表面についた凹みキズはなかなかやっかいです。凹みが見えなくなるまで上にニスを盛らなければならないからです。ニスには溶剤が多量に使われているので、必ず盛ったあと「痩せ」るのです。
時間がかかるわりにキレイに直りにくい作業ですが、それがこの樹脂を使うことでかなり楽に、早くなりました。
クイーンではありませんが、新しいことには常に拒否感なく接していきたいものです。
弦楽器工房こばやしは小田原の栢山から、弦楽器の出張修理を承っております。
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