さて、ダラダラと書いてきましたリタッチも今回で完成です。
指板の下から色を合わせていきます。引きの写真にしました。全体を見渡すと濃いところ、薄いところがマダラになっているのがわかると思います。
ということは、いまリタッチしている場所を均一に塗ってもキレイに直ったとは感じられないのです。
指板下の濃いところと同じような濃い色を、点々とのせます。リタッチしている場所に意図的に濃淡の差をつけていくのです。
バイオリンは光を複雑に反射するので写真が難しいですね(;´д`)
光沢が映り込んでいるので色が薄いように見えますが、ほぼ目立たなくなりました。
ここで完成、としても良いのですがまだ見方によっては修理箇所が目立つアングルがあります。
前から横から、グルグルと楽器を見る方向を変えると、明らかに修理したところが分かってしまう角度があるのです。
もともとの楽器に塗ってあるニスとは違うものを塗っているので、100%どこから見ても修理跡が見えない、なんていうことはあり得ません…。ですが、もう一手間!モアレのように見える色ムラを少し強調します。
少し濃い目の色で横に線を描くように濃いところ、薄いところの差をつけます。
表板は、縦方向へ木目の線がくっきりしているので、縦への色のせは均一に塗るときです。
今回は敢えてムラを出すように塗るので横方向に筆を使います。
バイオリンの写真は難し(以下略)。今度の写真は赤味が強く出てしまいましたね>_<
一手間の甲斐はあった、と思います!
最終のトップコートに透明ニスを塗って、布ペーパーをかけ、磨いて…これで完成!です。
元のニス状態を知っている持ち主であるお客様や、修理した本人ならともかく、パッと見た人が「どこを修理したの?」と言ってしまう程度にはわからなくなったと思います!
完成まではおよそ3週間でした。
1cmくらいまでの小さな傷直しはよくありますが、ここまで大きいリタッチは頻度としては少ないですね。
リタッチというのは究極的に言えば「ごまかし」の技術だと思っています。人間の目は自分で思っているよりも細かいところが見えてしまうものです。そして(矛盾しているようですが)意外と簡単に騙されてしまうものでもあります。
小さな傷ですと、小手先だけの簡単な色のせでなんとかなっちゃいますが、今回のものくらい大きいと「ごまかし」も理屈に沿ってやらないとうまくいきません。
そこが難しくもあり、楽しいところでもありますね!
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