弦楽器工房こばやし

小田原の弦楽器工房こばやしのブログです。仕事をしていて感じたあれこれを週一くらいで徒然と書いていきます。

インチと㎜の微妙な関係

今回は前回に引き続き、大きさ?長さ?のお話しです。個人的には非常に興味深い内容になりました。が、数字ばっかり出てきますので、どうかご容赦くださいね。

さて、エクセルにinchをコンマ5刻みで入力して、㎜に変換した表を作ってみました。

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なるほど、なるほど…。0.5inchは12.7㎜で、つまりこの10とも15ともつかないビミョーな数値が日本人を惑わす原因となっているわけですね。

これで見ると、とてもわかりやすく、ビオラのサイズは0.5inch刻みになっているのがわかります。

対応表としては

15inch  380㎜(381.0)

15.5inch 395㎜(393.7)

16inch  405㎜(406.4)

16.5inch 420㎜(419.1)

17inch  430㎜(431.8)

になると思います。( )の中は実際にinch数に25.4を掛けた値です。

楽器という手工品なので、細かなサイズの違いはあると思いますが、お互いに概ね近い値になっていますね。一番大きな誤差で17inchのときの431.8㎜で、1.8㎜の差が出ていますが…まあ、同じ規格のフルサイズ4/4のバイオリンですら小さいモデルと大きなモデルで5㎜くらいは余裕でズレる(^^;)ので、問題ない、としましょう。

しかし、こうして0.5ずつのinch=㎜表を見ていくと見慣れた数値に気づきます。

例えば13inchの330.2㎜は3/4サイズのバイオリンですね。

書き出してみましょうか。

1/8   10.5inch      267㎜(266.7)

1/4   11inch         284㎜(279.4)

1/2  12.5inch      315㎜(317.5)

3/4  13inch         330㎜(330.2)

7/8  13.5inch      342㎜(342.9)

4/4  14inch         355㎜(355.6)

この中だと1/4だけが大幅にずれてますね。原因はわかりませんが…。表には㎜とinchの数字の他に㎜を中心にどれだけ差があるのかを%でも表示してみました。

さっき差が大きかった17inchのビオラでも0.4%しか変わりません。1/4でも1.6%の差ですが、これを大きな差と見るか小さな差と見るか…。

しかし、これだけ書いてもなかなかinchの感覚には馴染みません…もともと海外のものですし、しかも初期のバイオリン製作時代はメートル法のできる前。当然といえばそうなのですが、㎝、㎜に慣れた我々にはわかりづらい単位です。

この表、E列から作り始めたのですが少ない値の方にも少し気になる数値があったので、蛇足とは思いましたがフルサイズバイオリンの各部サイズを入れてみました。表の上の方です。

……意外と、近くも、無い(T_T)ですかねぇ…。(しかしもしこのサイズで比率バッチリで作ったら名作ができたりはしないのだろうか…?)

こうした比較って無かったので、自分としてはなかなかに勉強になる内容でした。

例えば。

弦の長さは張りはじめの上ナット部から、テールピースの引っかけるところまで382㎜くらいが理想とされていますが、これは15inchだったんだな、とか。それを6:1で分割してるから駒までの弦長は327.5必要なんだ、とか。

バイオリンって14inchの本体に15inchの弦を張っているのか、とか。

そうなると、ネックが短かったバロックの頃ってもしかして弦の長さも14inchや13inchとinch刻みだったのでは?とか…。

バイオリンって、楽器ではあるんですが、工芸品としての性質もあると思うのですよ。なので、私なんかは「これはこういうものだから」とサイズに関しての考察をしてこなかったのです。

ですが、こうしてみると工芸品的な美しさというのは実は綿密な比率の計算に基づいて作られているからなのかな、ということも…あるかもしれませんね。

自己満足のブログですが、今回はとりわけ自己満足度が高いですね(^_^;)

この表も自分で知り得る知識だけで勢いで作ってますんで、もし、読んでいてご不明な点や間違っているところがあったらコメントででもご指摘いただけると嬉しいです。

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