弦楽器工房こばやし

小田原の弦楽器工房こばやしのブログです。仕事をしていて感じたあれこれを週一くらいで徒然と書いていきます。

弦の幅と弾きやすさ

久しぶりの技術のお話です。

バイオリン属の楽器はほとんどの場合、4本の弦が張られていることが多いですよね。

弦には様々な種類があって、材質、張力もそれぞれ異なります。

当然ながら、それによって触り心地や音色も変わってくるわけですが、それとは別に、弾きやすさという別の要素も絡んでくるから弦楽器はめんどくさい(・_・;

私は弦メーカーではありませんから、バイオリンの構造、つくりで弾きやすさを追求していきたいと思いますp(^_^)q

構造といっても、ネックの太さ、弦の高さ、弦の長さなどいろいろありますが、今回取り上げますのは弦の幅、です!

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上ナット、の部分に四つの弦がのる溝があります。

また、駒にも同じように弦の溝が四つありますね。


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この幅、大体のサイズは決まっているのですが、特に国際規格などがあるわけではありません。

まあそもそも、バイオリン自体が(いい意味で)いい加減な設計なので、大体これくらいで…という部分はとても多かったりします(-。-;

さて、上ナットの弦幅は私は16.5㎜というサイズで切ります。

これは(株)アルシェさんに勤めていたときに叩き込まれたもので4/4のバイオリンですと、一本あたりの間隔が5.5㎜と覚えやすく、これでずっとやってきました。

駒は型を持っているので一本一本の弦幅はそれに準じて切れば良いのですが、トータル弦幅は34㎜。

こちらも何の問題もなく、26年使ってきたサイズです。

ところが。買い替えなどで楽器を持ち替えたときに「以前の楽器よりも弦が押さえにくい」というお客さんがいらしたのです。

私は弾きにくい原因を探すのが仕事みたいなものですから、大体の見当をつけて診断するわけです。

弦の高さ…OK。

ネック太さ…OK。

ネック形状…OK。

指板形状…OK。

弦幅…OK。

あれ?問題ない?

……いやいや、以前の楽器と何が違うのかを調べないと。お持ちいただいた古い方のバイオリンを調べます…。

ですが、弦高はむしろ新しい方が低いくらいで、ネックも同じくらいの太さ、形状も押さえやすいような贅肉のないシュッとした形…。

何が違うのか?それが主題でもある弦幅だったんですね。

その差、上ナットで1㎜!駒で1.5㎜でした!

微細な差、と思いますよね?(^_^;)

弦一本ずつの差にしますと上ナットでおよそ0.3㎜、駒で0.5㎜です(゚o゚;;

ですが、駒の高さや指板の段差など0.1〜0.2㎜の差は人間の指はわかるんですよ。むしろ0.5㎜というのは大きなズレです。これはやるしかない!

やることは決まりましたが、問題もあります。

弦同士の間隔が狭くなるのは運指という点では改良ですが、移弦は難しくなります。私なんか良くやるミス(-。-;ですが、隣の弦に弓が当たりやすくなるんです(おそらく私が会社で覚えた弦幅は長年の経験による、運指と移弦のバランスの良い間隔だったのでしょうね。)。

そのことを説明した上で作業をした結果、「とても弾きやすくなった!」と仰っていただけました(^O^)

確信を持って進めてはいても、最終的にはお客さんのご要望に応えられたかどうかです。一安心でした。

今回の弦幅変更は、上ナットと駒と両方の作業を行いましたが、片方だけも可能です。指に近い上ナットの方が効果が高いと思いますが、それはそれぞれの楽器の状況によりますね。

「自分は手が小さくて運指で苦労している」という自覚がある方には有効な方法なのではないかと思いますよ。

もちろん、他にも弾きやすさを改善する方法はたくさんありますので、今現在弾きづらいと感じてらっしゃいましたらぜひ我々のような専門家にご相談くださいね。

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弦楽器工房こばやしは小田原の栢山にて、弦楽器の修理・調整・販売を承っております(出張修理も承ります)。

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