弦楽器工房こばやし

小田原の弦楽器工房こばやしのブログです。仕事をしていて感じたあれこれを週一くらいで徒然と書いていきます。

上ナットってどこ?

私は、お預かりした楽器を修理するにあたって、必ず説明をします。

その際に部位の名称をつい口走ってしまうのですが、伝わらないことが多いです(^_^;)

弦、駒、ペグなどは比較的良く触れるところですから皆さんご存知ですが、今回ご紹介するナットなんかは「?」ってされてしまいます。

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はい、ここです。下側、テールピースのところにもありまして、そちらは下ナットなんて言ったりします。

大体、いろんな言い方があったりするのも良くなくて、ナットの他にも、サドル、マクラなんて呼び方もあります。

さて上ナットです。

この楽器くらい使い込んでありますと、指板にも弦を押さえた跡がついてますね。

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けっこうカンタンに取れます(^○^)

なぜ、ここの修理が必要かといいますと弦が最も擦れるところだからです。

ほとんどの弦は芯材の上に金属の巻線が被さっています。金属のものが木の上を擦るわけですから、楽器を持ったら最初にする調弦は、いわばノコギリでナットを削っているようなものなのです(O_O)

えー…ちょっと大げさに言いすぎました(^_^;)…。

ですが、どんどこ上ナットの弦溝が削れていくのは事実です。

黒檀という堅木を使っているので、そんなにガリガリと削れるわけではありませんが、間違いなく、少しずつ溝は深くなっていきます。

深くなりすぎて指板と同じ高さまで削れてしまうと、ノイズが起き始めます。一番上の写真でA線の部分ですね。

接着剤と黒檀の粉を混ぜて溝を充填するという手もありますが、今回は「嵩上げ」という修理をしていきます。

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これは上ナットと同じ黒檀の板ですね。

これを外した上ナットに接着します。

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くっつきました。これを整形していきます。

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まだ接着した継ぎ目が見えてますが、これは後で消えるので大丈夫p(^_^)q

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貼り付けました。黒檀の板で嵩上げをした分上ナットが高くなっているのがわかりますね。

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ガリガリと金ヤスリで削っていきます。


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上面から平滑にして、曲面を作ります。

角が出ていると指が当たったときに違和感の原因になります。丸く仕上げたら、オイルを塗り込んで指板とのツヤを揃えます。

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綺麗になりました(^○^)

弦溝を彫ります。

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完成ですヽ(´▽`)/

弦を張ります!

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適正な高さの上ナットに戻りました!

金属巻線の弦が主流な今、上ナットの消耗は必ず起きます。ノイズの原因は他にもありますが、我々が真っ先に様子を見るところでもあります。

一時間もかからない作業ですので、気になりましたらご相談くださいね。

弦楽器工房こばやしは小田原の栢山から、弦楽器の出張修理を承っております。

詳しくはホームページをご覧ください。

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