弦楽器工房こばやし

小田原の弦楽器工房こばやしのブログです。仕事をしていて感じたあれこれを週一くらいで徒然と書いていきます。

表板の接ぎ合わせ部分ハガレ。


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久しぶりの技術のお話です(^◇^;)

こちらのお客様のバイオリン、駒の後ろ側をよく見ると白い線がはいってますね。

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ここです↑

これは表板の接ぎ合わせ部分が剥がれてしまっている状態です。

そんなに頻度のある修理ではありませんが、今回はお客様に快くご了承をいただけたので写真と共にどういう修理を行うか、ご紹介したいと思います。

バイオリン属の表板はほぼ例外なく、真ん中で接ぎ合わせてある2枚構造になっています。ビオラやチェロ、コントラバスもそうですね。チェロやコントラバスですと木材の幅の都合で4枚だったりもします。

これは一枚の板を半分にして接ぎ合わせることで見た目だけでなく、左右の音響特性も同じにする意図がある…らしいです。

正直、接ぎ合わせないで作ったことがないので、どこまで左右の対称が大事かは実感したことがありません(-。-;

何はともあれ、表板は上下方向の中心に接着している箇所があるわけです。

そしてこの接着箇所が稀に剥がれてしまうことがあるわけなんですね。

接着し直す必要があるのですが、楽器の外側からは直せませんのでまずは表板を剥がします。

我々はオープンなんて気軽に言いますが、人間で言えば開腹手術です∑(゚Д゚)

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開け方としては表板と横板の境目に薄いナイフを入れてバリバリと切り剥がしていきます。

何度やっても恐ろしい作業です(~_~;)

精度良く作られている楽器ほどピッタリくっついているので、どうやっても表板、横板に少なからぬダメージはあるのです…(T ^ T)

表板、全部開けた方が作業性は高いのですが…なるべくダメージを少なくしたいということもあり、どこまで開けるのか、見極めが難しいところです。

今回で言えば、ネックの付け根は接着したままで作業することにしました。

バイオリン属では構造を強固にするために内部に6箇所のブロックが入っています。

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ネックの入っている上部分、エンドピンの入っている下部分、そして左右の尖っている4箇所ですね。(適切な写真がありませんでした、すみません。)

このブロック部は他の箇所よりも接着面積が広いので、とても強く接着されており、中々剥がれません(・_・;

なるべく下部の3箇所で作業できると良いのですか、中心の直したいハガレが駒付近まで来ているので仕方なく上の一つを除いて剥がしてあります。

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剥がれている場所をニカワで接着したあと、補強の「パッチ」と呼ばれる、いわば木の絆創膏を貼ります。ここまできたらあとは元に戻すだけです。

表板を再接着し、ニスを塗ります。

接着部はニスが欠けていることが多く、きっちりくっつけても隙間があいているように見えることがあります。

せっかく再接着したのに、隙間が見えると直った気がしませんので、ここは念入りに隙間を埋めるようにニスを塗ります。


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他にあった傷にもついでにニスを入れて綺麗にしました。

元々の楽器がとてもしっかりしていた良い楽器だったので、表面を磨くだけで美しいツヤが戻りましたね(^○^)

乾燥がヒドい時期です。

板のハガレや割れなどのトラブル、どうしても増えますので、見つけたら早めに直してあげてくださいね。

弦楽器工房こばやしは小田原の栢山から、弦楽器の出張修理を承っております。

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